ねつ・が~る

ねつ・が~る

 まだまだ男性比率の高い環境で活躍する女性を応援するとともに、熱処理分野に対する社会の理解を深めることを目的として、熱処理に関わる女性から、これまでの歩みを含めて自由に自己紹介いただく企画です。

 3か月おき程度で更新予定ですので、次回もどうぞご期待ください。
(ねつ・が~るNo.015:2024年10月~11月頃掲載予定)

 なお、自薦他薦を問わず“ねつ・が~る”を随時募集しています。ご興味のある方は中部支部事務局(info★jsht-chubu.jp)までご連絡下さい。
※上記の「★」記号を「@」記号に置き換えてください。

ねつ・が~る No.014
高周波熱錬株式会社
研究開発本部 熱処理技術開発部 FTC(熱処理技術センター)
岩村 真歩 さん

●入社のきっかけ
 大学では無機材料(ナノカーボン)の研究をしていましたが、材料関係全般の講義を受講していたこともあり、幅広い分野で就職活動を行っていました。その中で、学内の合同企業説明会で当社と出会い、短時間(数秒)で金属が赤くなる高周波熱処理というものに興味が湧き、大学で学んだことを多少なりとも活かせそうと思ったので入社を決めました。

●仕事紹介

 現在の主な業務は、高周波加熱を用いた新しい熱処理プロセスの開発や顧客から依頼された試験片の熱処理対応などです。開発や試作では、熱処理方案・条件検討から、加熱コイル・治具設計、熱処理試験、品質評価(硬さ分布や組織観察)、疲労特性評価、さらには破損品調査まで様々な作業を行います。開発は上手くいくことの方がまれで、狙った品質・特性が出ないことも多々あります。その原因を突き止めるための文献調査や試験後品調査を行い、更にそこからどう改善したら狙った特性になってくれるかを検討する必要があり、勉強することが多く大変ですが、やりがいを感じています。

●今後の目標

 現在開発中のプロセスを早く世の中に出していくことが目標ですが、まだまだ課題は山積みなので、一つずつ解決していきたいと思っています。さらに、熱処理や分析技術・特性評価に関する知識やスキルを深掘りすることで、要求された熱処理品質を達成するだけでなく、その品物の特性も見越したプロセスを開発していけるように頑張っていきたいと思います。 また、趣味の料理や買い物の時間や家でまったり過ごす時間などを充実させて、ライフ・ワーク・バランスも大切にしていきたいです。

ねつ・が~る No.013
株式会社東研サーモテック
三重工場 品質管理課
平島 和加奈 さん

●入社のきっかけ
 子供の時から科学や機械に興味があった事から、鹿児島高専機械工学科に入学しました。在学中に学んだ材料学で、「温度や炭素の含有率で性質が変わるなんて、鋼って面白い!」と思い、鉄鋼系の会社に就職しようと決めました。そんな中、合同企業説明会で偶然出会ったのが東研サーモテックでした。お話を聞いて、熱処理は私のやりたいことかもしれない!!と思い、入社を決めました。

●入社後のキャリアと職場環境

 入社後は製造課に配属となり、約1年間は熱処理される製品の前加工や、熱処理後の製品の解体・梱包作業を行っていました。炉に囲まれて暑く、体力を使う日々で多少の不満もありましたが(笑)、優しい先輩方に支えられてやってきました。

 その後、品質管理課に異動となりました。品質管理課では、熱処理された製品をカットしたり磨いたりし、専用の機械で製品の硬度を測ったり、腐食して組織を確認しています。

 検査対象の製品がどのような熱処理をされているのかを理解できていないと、組織の良し悪しの判別や、硬度の異常感に気づくことが出来ないので、初めの頃は覚える事が多くて大変ですが、同時に不良品を流出しないための最後の砦としての重要な業務であると感じながら仕事をしています。

 約4年働いた今では、新規製品の検査に携わったり、熱処理技能士や金属材料試験士の試験を受けたり、成長を感じる日々です。設備の仕組みや製造の流れなどが、品質管理の仕事に関わってくることもあるので、不満のあった製造課の勤務も今の自分の糧になっていると感じています。

 私の働く工場では、製造課は女性が約2割、品質管理課では女性が約5割と、社内でも部署によって女性の割合にバラつきがあります。各部署の仕事内容に応じて、少しずつですが女性が働きやすい職場になるよう工夫をされていると感じています。例えば、私が所属している品質管理課では、目線の位置が高くなってしまう切断機に踏み台を設置したり、女性検査員の多い部屋では検査機器の載っている机が低くなっていたりしています。

●入社後のキャリアと職場環境

 旅行したり、博物館や史料館を巡ったりして、新しい発見に出会うのがマイブームです。最近の日本刀ブームに乗っかって、熱処理の面白さをもっと世間に知らせることはできないかなと考える事もあります(笑)ゲームや映画も同じぐらいに好きなので、休日の過ごし方の差が激しいです。

ねつ・が~る No.012
八田工業株式会社
製造部
髙山 知恵 さん

入社のきっかけ
 入社のきっかけは自宅から自転車で通勤できる距離、その他は子供の行事や体調不良などで休みをもらえる所を探して八田工業株式会社に辿り着きました。幼い子供2人を育てるシングルマザーで仕事を探すのに必死で、他のねつ・が~るさんの様にかっこいい入社のきっかけではありませんが当時資格も何もない私を採用してくれた会社に感謝しかありません。今では入社当時に保育園児だった子供も大きくなり八田工業株式会社で共に働いています‼

●仕事紹介

 私の仕事は硬さ測定、組織写真観察、検査成績書の作成が主になります。熱処理の違いにより様々な組織が観察でき一日中観察していても飽きないくらい作業を続けています。最近は新入社員の人たちに硬度測定の方法や試料作製を教える教育担当にもなり、技術の継承というほどのものではありませんがこれまでやってきたことが役に立っているという実感があります。また5S推進の係やオープンファクトリーのメンバーに抜擢してもらい熱処理を地域の方に知っていただく機会ということもあり楽しみながら頑張っています。

●今後の目標

 私は、八田工業株式会社に入社して17年になります。年数だけで見ればベテランなのですが、まだまだです。家ではテレビでいつでもNetflixやその他も色々見られる環境を息子が作ってくれたので毎日楽しんでいます。現在、金属熱処理技能士1級を持っていますが3年後に特級技能士の試験を受けます。勉強が苦手で・・・ですが合格でも不合格でもやることに意味があると思っているので、よりカッコイイねつ・が~るになるため挑戦します‼

ねつ・が~る No.011
DOWAサーモテック株式会社
技術管理部
大塚 真弥 さん

[久留米工業高等専門学校 材料工学科卒業]

入社のきっかけ
 学生時代、金属材料の勉強をしていました。選択科目で「熱処理」があり、単位を取るために必死に鉄炭素系平衡状態図を暗記したり、焼入れ・焼なまし・焼ならしの条件を勉強していた時に、金属を温めて冷やすだけで固くなったり、削れにくくなったりするなんて面白いと思い、熱処理という分野に興味を持ち、熱処理受託加工を行っている、DOWAサーモテックへの就職を決めました。

●設備設計者へ

 熱処理品受託加工工場へ配属になると思い入社しましたが、工業炉設備開発部門に配属され、電気設計を担当することになりました。熱処理製品の研磨や顕微鏡観察等を行うと思いながら、地元から出てきたのに、全く違う分野で女性も居ない開発へ配属になり、はじめは不安でいっぱいでした。設備?真空?製図?電気配線?すべて何も分からない状態からのスタートでしたが、付きっ切りで上司がついてくれたこともあり、少しずつ真空熱処理設備の電気設計を学びました。正直本当に忙しく、分からない事だらけで目が回ったり、地元が恋しくなった時もありましたが、何とか踏ん張って設備の開発をしてきました。その結果、トヨタ自動車様と一緒に開発を行ってきた真空浸炭焼入設備が、素形材産業技術表彰の一般財団法人素形材センター会長賞を受賞した際に、会社の代表として、名前を連ねて頂けました。何も知らない所から頑張ってきた努力が報われ、誇りになったと感じています。

●今後の目標

 弊社では、同郷の久留米高専卒生が、10人近く在籍しています。工業炉製造部門、技術部門、熱処理受託部門、各地に点在し、ばらばらの仕事内容なので、いずれ、設備設計・製造・熱処理の良品条件出し、その後の運用まで久留米高専卒生で作り上げて久留米高専はすごい!となることが目標です。そのために、一番後輩でまだまだ物知らずなので、熱処理・機械関係も含め色々な知識を身に着けていきたいと思っています。

ねつ・が~る No.010
旭千代田工業株式会社
品質保証部
水川 朋美 さん

[愛知工業大学 応用化学科 応用化学専攻卒業]

職歴・現在の仕事
 高校のときに化学に興味を持ち、大学では、無機化学の研究室で遮熱顔料について研究、と今の仕事とは関係ない分野にいました。しかし、就職活動の際に、遮熱塗料が使われる熱処理業界を知り、金属熱処理に興味を持ったことをきっかけに、旭千代田工業(株)に入社しました。入社後は、基礎熱処理や浸炭焼入れ・軟窒化・りん酸塩処理などを勉強し、生産現場実習を経て、品質保証部に配属されました。配属後は、品質管理やISOなど品質保証体制の強化・改善や、品質に関する社内勉強会の開催などを中心に取り組んでいます。

●休みの過ごし方

 家族や友人とカフェに行って、美味しいものやカフェの雰囲気を楽しみながら、色んな話をして過ごしています。一人のときには、小さい頃から通っているプールで一日中泳いだり、家でゲームをしてのんびり過ごしたりすることが多いです。どちらもゆったり出来て充実した時間なので、ストレス発散や気分転換になっています。

●今後の目標

 熱処理は外観で品質が評価できないうえ、非常に重要な特性のため、社内で品質に対して誰よりも厳しくなる必要があると思っています。しかし、ただ一方的に厳しく言うのではなくて、どうしたら工場が楽に運用し、安定した品質を確保できるのかを現場技術員と一緒に考え、レベルアップすることが目標です。現在は膨大な品質データを駆使して品質改善ができるように、データサイエンティストを目指しています。また、熱処理コンテストに参加した際は、数多くの処理組合せ案を試験・評価・考察することが大変でしたので、実験計画法やタグチメソッドを習得し、品質管理や各種実験など改善業務に活用できるよう努力していきたいです。

ねつ・が~る No.009
川崎重工業株式会社
技術開発本部 技術研究所 材料研究部
小鯛 亜紀 さん
[京都大学大学院 金属加工学専攻 修士課程修了]

現会社への入社のきっかけ
 小学生の頃から理系好きで、大学は工学部に入り、鉄鋼材料の研究室に所属しました。そこでの研究活動が気に入っていたので、企業で材料関係の研究職に就きたいと考えました。できれば関西圏で暮らしたいという希望もあり、当時関西圏に研究所のあった鉄鋼系の会社2社と重工系の会社1社を希望先として就職活動を行いました。最終的には、「鉄鋼系の会社には鉄鋼の専門家はたくさんいるが、重工系の会社では少ないはず」および「材料を作るのもよいが、使う方から関係するのもおもしろそう」という考えから、重工系の現会社を目指しました。

入社後のキャリア

 1990年に入社し、同期300人超えの中、事技職の女性は3人だけ(事1、技2)でした。技術研究所に配属され、主に鉄鋼材料とその熱処理、および表面処理とトライボロジーの面から、多岐にわたる製品の研究開発に従事してきました。時には樹脂やセラミックスなどに関することも勉強して取り組みました。社内で希少価値(?)の材料技術者として扱ってもらえたようなので、入社前の考えはあながち間違ってなかったと思っています。

 途中、調査分析専門のグループ会社:川重テクノロジーに出向し、課長として技術とマネジメントを担当しました。技術者の仕事をしながら、売上や利益といった成果が毎月見えて、面白いと感じました。今は材料研究部に戻って研究開発に従事するとともに後進への技術伝承に力を入れています。

明石での暮らし

 会社と自宅のある明石は、地元の海産物に加えて近隣の丹波や淡路の美味しいものが豊富で、日々食生活を満喫しています。休日は弊社製の小型モーターサイクルKSR110(高速道路不可!)で、巻き添えの夫(中型乗り)とともに、いわゆる下道(したみち)のみのツーリングを楽しんでいます。コロナ禍で遠出できなくても、播磨方面や丹波方面へ行ったり、明石海峡大橋は渡れないけど明石港から高速船で淡路島に行ったり、ちょっと日帰りで楽しめる道がいろいろあって、ストレス発散していました。

 職場では「ワーク・ライフ・シナジー」が重要視されていますし、ワークもライフも、より充実させていきたいと思っています。

ねつ・が~る No.005~008
株式会社アイシン 岡崎工場
マイルド浸炭ギヤ加工課の4名の皆様

●職場紹介

 私たちは、浸炭焼入れの中でも真空浸炭装置と高周波焼入れを組み合わせた炎も油も使わない「マイルド浸炭」の職場にいます。環境にも優しく安全で、女性でも安心して働ける職場です。
 しかし、品質管理は厳しく熱処理職場で唯一「金属組織判定」を行っている職場で、苦労しながらも頑張って取組んでいます。

マイルド浸炭職場での私たちの挑戦

新垣 伶実さん(No.005)

【金属組織判定】新垣 伶実さん(No.005):作業歴3年

 私は入社後最初の2年間で部品の切断・表面硬さ測定技術を身につけました。男性中心の職場で、切断砥石ハンドルの位置が高くて使えなかったり、力がなくワーククランプがしっかりできなかったり、たくさんの問題がありました。それでも改善や創意工夫を重ね、今では女性でも働きやすい職場になりました。また、金属組織は同じ形・模様はなく覚えるのに苦労しましたが、時間をかけた分、作業への理解も深まり楽しみながら金属組織判定出来るようになりました。今後は国家技能検定取得に向け頑張ります。

岩元 成美さん(No.006)

【高周波焼入れ機】岩元 成美さん(No.006):作業歴1年半

 私が担当している部品は全周高周波焼入れで部品全部が真っ赤になります。一見簡単そうに見えますが実は温度の上げ方、冷やし方が重要で温度波形を常に監視したり、異常再発防止のため予防保全活動に取組んでいます。コイル洗浄作業などで大きく変化してしまう温度波形を見ながら仲間同士でこうしたほうがいいのではと対策について話す時間が難しいながらも楽しいです。今後は工程改善に力を入れていきたいと思います。

河津 祐香さん(No.007)

【真空浸炭装置】河津 祐香さん(No.007):作業歴3年

 私は入社1年目から浸炭炉への製品の投入や時間ごとに温度・圧力・ガス流量等をチェックする炉管理の仕事をしてきました。全34種類のチャート波形を覚え正常波形であるか判断することに最初は苦戦し悩みましたが、先輩に覚え方のコツを教えてもらい何とか必死に習得したのを今でも覚えています。今後は、定常作業だけでなく設備改善や故障の未然防止などにも取組みたいと思います。

衣川 優紀さん(No.008)

【金属組織判定】衣川 優紀さん(No.008):作業歴3年

 私の初めての仕事は、部品の金属組織判定をする為の切断作業でした。砥石で切断する時の火花に恐怖心を覚え先輩が10分で切る部品を、私は1時間かけて切断していました。同期へのライバル心や先輩のようになりたい、との想いから、諦めず徐々に作業を習得出来て、先輩に認めてもらった時はとても嬉しかったのを今でも覚えています。
 同じ模様が無い様々な金属組織に苦戦しましたが、2年間勉強し金属組織判定者に認定されました。浸炭工程・高周波焼入工程と組織の結びつきが解るようになってきた今、やっと金属組織判定者としての第一歩を踏み出せたかなと思います。これからも勉強を重ね一人前の金属組織判定者を目指します。

●今後の意気込み

 私たちは“熱処理は男性の職場”という常識を変えようと4人で力を合わせて一生懸命に挑戦してきました。ここまで出来たのは職場の上司、仲間が日々の頑張りと挑戦を認めてくれ、女性が働きやすい職場づくりに積極的に取り組んでくれたおかげです。これからも私たち4人以外に多くの女性が働きやすく活躍できるよう、職場の改善を加速させたいと思っています。そして私たちはもっとスキルアップできるよう挑戦していきます。

ねつ・が~る No.001~004

ねつ・が~るNo.001からNo.004の方々については、熱処理62巻4号にてご紹介しております。